「は」と「が」
1.「は」の基本的性質
A.主題を表す 主題になれるのは聞き手(または読み手)に指示対象(指すもの)がわかるものに限られる。
1) 洋子さんは美しい。
2) スミスさんはハンサムだ。
3) 山田さんは学生です。
4) 山田さんはパーティーに来ました。
B.対比を表す。
5) 今度のパーティーに、田中さんは来ますが、山田さんは来ません。
6) 雨は降っていますが、雪は降っていません。
7) 私はみかんは好きです。
8) 田中さんはパリには行かないと思います。
9) この本は難しくはない。 難しい←難しくはない→難しくない
10) ここは静かではない。(非対比的) cf.ここは場所はいいけど、静かではない。(対比的)
11) 彼は医者ではない。(非対比的) cf.彼はインターンだから、まだ医者ではない。(対比的)
2.「が」の基本的性質
A.中立叙述を表す 現象文とも言える。例えば、何かを発見してそのまま述べる場合、出来事を報告する場合、一般的法則的な帰結を述べる場合、現象文で表す。
12) (あっ、)雨が降っている。
13) 明日、パーティーがあります。
14) このボタンを押すと、お湯が出ます。
15) A:私の留守の間に何かありましたか。
B:山田さんが来ました。
B.総記を表す 総記というのは「~だけが」「他でもない~が」という意味のことです。
16) A:だれが来たのですか。
B:山田さんが来ました。(山田さんです。)
17) A:どの料理がおいしかったですか。
B:ステーキがおいしかったです。(ステーキです。)
18) A:どなたが幹事さんですか。
B:田中さんが幹事です。(田中さんです。)
3.「は」と「が」の基本的な違い
19) 山田さんは大学生である。
20) 田中さんは山本さんを愛している。
21) 山田さんが大学生であること(は事実だ。)
22) 田中さんが山本さんを愛していること(はみんなが知っている。)
4.「は」と「が」の使い分けの規則
A.従属節‧名詞修飾節の中では「が」を使う。ただし、対比的‧並列的な意味を表す従属節では「は」を使う。
23) 彼が来たので、パーティーはおもしろかった。
24) 私が生協で買った靴下はこれです。
25) 田中さんがこっちに走ってくるのが見えた。
26) 田中さんは英語が得意だが、山田さんはドイツ語が得意だ。
B.述語が動詞以外(形容詞‧名詞+だ)のときは通常「は」を使う。動詞の場合でも次のときは通常「は」を使う。
①主語が「私」「あなた」(一、二人称)である場合
②恒常的な出来事を表す場合
③否定文である場合
27) 山田さんは英語の先生です。
28) この荷物は重い。
29) 彼は毎朝公園を走っている。 cf.彼{が/は}公園を走っている。
30) 私は映画館へ行った。 cf.山田さん{が/は}映画館へ行った。
31) 雨は降っていない。 cf.雨が降っている。
C.主語が新情報なら「が」を、旧情報なら「は」を付ける。
32) 山田さんが英語の先生です。
33) この荷物が重い。
34) 彼が毎朝公園を走っている。
35) だれが来たのですか。 cf.×だれは来たのですか。
36) 来たのはだれですか。 cf.×来たのがだれですか。
37) 雨が降っている。
38) 公園で子供が遊んでいる。
参考文献:
庵 功雄‧高梨信乃‧中西久実子‧山田敏弘(2000)『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』スリーエーネットワーク
――――(2001)『中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック』スリーエーネットワーク
久野 暲(1973)『日本文法研究』大修館書店
佐治圭三(1991)『日本語の文法の研究』ひつじ書店
寺村秀夫(1991)『日本語のシンタクスと意味Ⅲ』くろしお出版
野田尚史(1996)『新日本語文法選書Ⅰ 「は」と「が」』くろしお出版
三上 章(1960)『象は鼻が長い―日本文法入門―』くろしお出版